技適問題とは、日本国内で技適マークのない(通信機器として認定を受けていない)スマートフォンやタブレットなどの通信機器を利用する事による違法行為や、現状それらを取り締まれていない事であったり、法整備の是非であったり、技適マークを取り巻く様々な問題の事を指して言う呼称です。

技適マークの詳細についてはこちら「技適マークとは?」をご覧下さい。

日本国内で無線機など通信の出来る機器を使用するには、総務省が管理する無線局免許か「技術基準適合証明」「技術基準適合認定」のどちらか、または両方の認証を受ける必要があり(微弱電波除く)、認証を受けた通信機器や設備には「技適マーク」を表示させる事になっています。
技適マークの主な目的は他の通信機器に影響を与えないようにするためです。

スマートフォンの画面に表示されている技適マーク
技適マーク。端末本体に刻印やシール、またはディスプレイ表示(2010年4月28日から施行)も可能です。

昔からあった技適マークですが、最近何が問題になっているかというと「格安スマホ」で知られるSIMフリー端末です。
ドコモやau、ソフトバンクのような大手通信キャリアが取り扱う携帯電話であれば、例外なくすべての機器に技適マークが付いていますので問題はありませんが、有名メーカーが日本向けに製造し審査を通した一握りの端末や、日本の会社がSIMフリースマホとカードをセットにして販売している商品などを除いて、そのほとんどが海外で販売や使用される目的で作られたもので、技適マークは付いていません。

ここ数年で急速に普及し出したSIMフリー端末ですが、技適についてはまだ一部の知識あるユーザ以外はまだそれほどの知名度がなく、存在を知らないまま使っているユーザも多数いるようです。

SIMフリー端末は、どのキャリアが発行しているSIMカードでも利用できる端末の事です。
例えばドコモで購入した端末はドコモのSIMカードしか使えませんが、これをSIMロックといい、SIMフリーはその反対語に当たる用語です。
2015年5月1日からは「SIMロック解除義務化」が開始される予定で、以降発売される端末はショップに持ち込めば一部例外を除きロックを解除してもらえるようになります。

ただし、そのSIMカードの対応している周波数や回線の種類と、端末の対応が合っていないと、SIMフリーであっても使えません。

詳細についてはこちら「SIMフリーとは?」(作成中)をご覧下さい。

技適マーク付きのSIMフリー機器を使えば何も問題がないわけですが、それらは日本国内ではほとんど流通しておらず、輸入代行業者や海外のネットショップなどで購入できる端末は現状技適マークがありません。
国内での流通がないのは、以前からSIMフリー端末が普及していた海外とは違い、日本では長らく流通している端末のほとんどがSIMロックされた端末であったため、これまで需要もなかったためスマホメーカーからしても技適を通す必要がなかった事が影響しているのかもしれません。

技適マークのない端末を国内で使うと電波法違反に当たりますが、これらを取り扱っているショップでも技適マークには触れられていなかったり、購入者の自己責任である事が書かれていたりしますが、技適についての情報がまだあまり一般的には知られてい事から、MVNOの増加とともに技適問題を認識せず購入しているユーザが多数いるものと思われます。
また、海外でそれらの製品を個人で購入して日本に持って帰り使っている機器も相当数あると思われ、知らず知らずのうちに電波法に違反してしまっている場合もあります。

MVNOの詳細についてはこちら「MVNOとは?」をご覧下さい。

では、海外から日本に来る旅行者の多くが持っているであろう技適を通っていない端末は電波法違反になるかというと、国際ローミングでの日本国内利用は認められており違法ではありません。
しかし、カードを差し替えたり、Wi-Fiを利用すると違法となります。

なお、日本以外の国でも技適のような国内の電波を安全に使うための法律があり、よく知られているのはアメリカの「FCC」(Federal Communications Commission)や、欧州連合の「CE」(CE marking)などがあります。

下記ではこの「技適問題」をさらに詳しく見ていきます。

スマホだけじゃない技適問題
上の項目では主にSIMフリーのスマートフォンについて取り上げましたが、技適マークが必要なのは当然それだけではなく、電波を発する端末すべてが対象になります。
例えばノートパソコンのWi-Fi、ラジコン、トランシーパー、Bluetoothスピーカー、3GやLTE・WiMAXなどの4G回線など等、身の回りだけでも数え切れないほどの機器が対象です。

これらもやはり問題は日本向けに作られていない(技適マークのない)ものが国内で使われているしまっている事です。

この問題が大きく報道されたのが2013年6月、お掃除ロボットで有名なルンバです。
製造しているのはアメリカの会社であるiRobot(アイロボット)社で、日本仕様正規品でなく並行輸入の一部モデルに技適をクリアしていない製品があったようです。
これについて総務省からは「販売者ではなく使用者が電波法違反に問われる」と注意が呼びかけられました。

並行輸入の詳細についてはこちら「並行輸入とは?」をご覧ください。

最近だと2014年11月に、「自撮り棒」とか「セルカ棒」といわれる、棒の先にスマホを取り付け少し離れた位置からの自撮りができるツールが話題に。
Bluetoothを使ってシャッターを切る仕様で、技適を通していない商品でした。

FMトランスミッターや赤外線通信など、数cmや数メートル程度の微弱電波で出力も低いものは技適は必要ないようですが、規定の周波数帯と電界強度に応じて「微弱無線設備性能証明」があります。
(FMトランスミッターも赤外線通信も出力の高いものは微弱電波ではありません)

なお電子レンジについては電磁波を発しますが、こちらは「高周波利用設備」の認定が必要です。

違反するとどうなる?
携帯電話に限っていえば、実は電波法違反の罪に問われるのはSIMカードを発行したキャリアになります。
しかし当然ユーザにも電波法違反の幇助と判断される可能性もあります。

携帯電話ではありませんが、実際に電波法違反の幇助で逮捕者も出ています。
2010年、他人のパソコン用無線LANを無断で使える機器を販売したとして販売店の3名が逮捕されたのですが、販売されていた機器は電波法で定められている上限の約1000倍の出力があるもので、当然技適マークはなく、容疑は「電波法違反幇助」。
違法機器を販売する事で購入した客が電波法違反する手助けをしたという事です。
客5人については「電波法違反」の容疑で書類送検されたそうです。

裁かれるのは機器の購入者(利用者)だけでなく、悪質と判断されれば販売側も幇助で逮捕可能ということですね。
携帯電話でも、キャリアだけでなく利用者も・・・といえそうです。

なお違法電波の取締りは総務省の電波監視システム(DEURAS)などがあり、技適で認められている以外の電波を出せば検知できますので、技術的には使用者の特定はそれほど難しいものではないでしょう。

違反しない方法は?
総務省のウェブサイトで技適を通った機器を調べる事ができます。
こちら「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」です。
ソニーのエクスペリアならXperiaでなく型番を「型式又は名称」の項目に入力する必要があります。
例えばドコモのXperia Z3 SO-01Gの場合は「SO-01G」を入力します。

日本でもこれからの本格的なSIMフリー端末の普及に伴って技適をクリアしたものが出回ってくるようになるとは思いますが、まだまだ少ない状態ですので販売店に問い合わせたり、上記の総務省のページから調べる事で解決できそうです。

現状や法改正について

この技適問題に直接的に関係する箇所の改正等は今のところないようですが、2015年1月に外国人旅行者に限り技適のない海外の端末でも利用を許可する法改正を検討しているとの報道が見られました。

ただ総務省からの正式な発表ではないため、今後動きがありましたら当記事を更新します。