「パルメザンチーズ」はイタリアで作られている「パルミジャーノ・レッジャーノ」の英語読みです。
(スペル:「Parmesan cheese」「Parmigiano Reggiano」)

英語にしただけなら全く同じものだろう!となりそうですが、そうとも言えるしそうとも言えない、このチーズの名称をめぐる複雑な事情があるので詳しく見ていきます。

まずは内容について簡単におさらいです。
こちらのスーパーなどで見かける、黄色いフタに緑をした筒状の本体でお馴染みのクラフトのパルメザンチーズ。

そして下の画像がイタリアの代表的なチーズ「パルミジャーノ・レッジャーノ」です。

これを削って粉にしたのが、クラフトのパルメザンチーズかというと違います。

アメリカで作った、パルミジャーノ・レッジャーノと同じような製法で作られたチーズを削って粉にしたのが「クラフトのパルメザンチーズ」です。

なんだか理屈っぽくなってしまいましたが、単純にアメリカで作ったかイタリアで作ったかだけの問題ではなく、ここで名称についての問題が出てきます。

イタリアではDOPによって定められた製法かつエミリア・ロマーニヤ州の一部地域で作られ、1年の熟成期間を経て形や色・艶・空洞がないかなど検査しDOPの認定を受けたチーズのみが「パルミジャーノ・レッジャーノ」を名乗ることが出来ます。

なので、たとえ日本やアメリカで全く同じ製法でチーズを作ったとしても厳密には「パルミジャーノ・レッジャーノ」でも「パルメザンチーズ」でもないのですが、この「パルメザンチーズ」の名前が世界的に普及しているため現在でも使われてしまっている現状です。

「パルメザンチーズ」として売られているほとんどは“本来の”パルメザンチーズではありませんが、チーズ専門店など一部では本物を使って粉チーズにしたものも販売されています。

なので結論としては、一部はパルミジャーノ・レッジャーノと同じものですが、多くの「パルメザンチーズ」として販売されている粉チーズはパルミジャーノ・レッジャーノ風として作られたチーズを粉にしたもの。という事になります。

DOP(ディーオーピー)とは?
イタリアの原産地名称保護制度で、チーズやワインなどの伝統的に作られている食材に、生産地域や品質などの指定・管理。

その基準を満たした場合に名称使用を許可する制度です。

「Denominazione di Origine Protetta」の略で、読み方は「デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ」
「DOP」または「D.O.P.」と表記されます。

では、なぜイタリアで作った本物を使わず、アメリカで作ったチーズを使うのかというと、一番大きな理由はコストです。

上記の通り「パルミジャーノ・レッジャーノ」になるためにはDOPによる厳しい品質管理と最低12ヶ月の熟成期間も必要な上に検査に合格する必要があります。
しかしチーズメーカーが独自で作ったものは、製造工程などは似ているものの、熟成期間も非常に短く安上がりで済みます。

しかしイタリアとしては国内で時間と手間をかけて上質の香りと味に育てあげたチーズだけしか名乗れないはずの名称を、簡単に他の国で作ったチーズに使われ、店頭には同じ名前のチーズとして販売されるわけですから、許せない立場です。

2003年にはイタリア産でないのにフランスで「パルメザン」の名称が使われ販売されているとして欧州司法裁判所に訴えを起こしています。
争点の1つになったのは「パルメザン」は「パルミジャーノ・レッジャーノ」の事を指す名称なのかどうかという点です。

つまり「パルメザン = パルミジャーノ・レッジャーノ風チーズ」のことであり、パルミジャーノ・レッジャーノそのものを指すものではないという解釈ができるかどうかです。

欧州司法裁判所が出した結論としては「パルメザン」は「パルミジャーノ・レッジャーノ」を指す名称と認定され、パルミジャーノ・レッジャーノを使っていないチーズは「パルメザン」を名乗れないとされました。
判決が適用されるEU諸国では本物以外のパルメザンは販売されていませんが、それ以外の国では今もパルミジャーノ・レッジャーノでない「パルメザン」の販売が続いています。

「パルメザンチーズ」というと日本では粉チーズや粉状のチーズ全般の代名詞になっていますが、上記の通り「パルミジャーノ・レッジャーノ」の英語読みなだけです。
なのでクラフトの商標でもないですし粉とも限りません。