「白書」(はくしょ)は日本政府の各省庁が発行する、調査や報告書であったり政府が行う施策などを国民に周知させるための刊行物のことで、「経済財政白書」「国民生活白書」「労働白書」など様々な白書があります。
語源となっているのは1920年にイギリス政府が発行した報告書で、白い表紙の色だったことから「White paper」(ホワイトペーパー)と呼ばれるようになり、日本でもこれを直訳して同様に刊行された資料を「白書」と呼ぶようになりました。
各省庁から発行されている白書については以下のリンクから確認することができます。
なお日本では外務省だけは1957年に第1号が刊行された外交の報告書を白書というでなく青の「外交青書」(がいこうせいしょ)という名称にしており(2022年現在)、表紙の色から由来しています。
もともとは上記のように「政府が発行した報告書」というの意味で使われていましたが、その後はドラマや漫画や曲などにも「白書」という言葉が使われるようになり、現在では白書を一言で簡単に言うと「報告書」というような意味合いになっています。
1990年代以降になるとアメリカでは企業が自社のサービスや製品などを他社に売り込むための技術や強みなどが書かれた資料の事を「ホワイトペーパー」と言うようになり、日本でも1990年代半ば頃からビジネスやマーケティングの世界に限っては白書でなくホワイトペーパーというフレーズが使われています。
詳しくはこちら「ホワイトペーパーとは?」をご覧ください。
以下では「○○白書」のような白書のフレーズを使った作品や、由来であるイギリスのWhite paperについて、法制局の解説など、白書についてさらに詳しく見ていきましょう。
イギリスのホワイトペーパーについて
上記で「White paper」についてイギリスから発祥した事について触れましたが、一番最初のWhite paperは1920年に議会に提出された、「砂漠の女王」として知られるガートルード・ベル(Gertrude Margaret Lowthian Bell)さんの報告書で、White paperの名を広めたとしてよく知られているのは1922年の中東白書(チャーチル白書)と言われています。
なおWhite paperよりもずっと前の、海を渡って植民地を増やしていたイギリス帝国の時代には、外交の報告書としてBlue book(ブルーブック)という、表紙の色から由来した報告書も存在していました。
白書の名称が付く有名な作品
「○○白書」のような様々な「何とか白書」が存在していますので、有名な作品と推測を含むタイトルの意味をまとめました。
ビバリーヒルズ高校白書 | アメリカで1990年から2000年まで放送された青春テレビドラマ。英題は「Beverly Hills, 90210」なのでWhite paperは使われておらず、邦題で白書と付けられたようです。 「ビバリーヒルズ高校で過ごした報告書」のような意味合いになりそうです。 |
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幽☆遊☆白書 | 集英社の「週刊少年ジャンプ」で1990年から1994年まで連載されテレビでも放送された人気アニメ。 「霊界での色々な出来事の報告書」のような意味合いでしょうか。 |
あすなろ白書 | 1992年から1993年にに小学館「ビッグコミックスピリッツ」に連載された柴門ふみさんの漫画で、1993年に木村拓哉さんや石田ひかりさん、鈴木杏樹さんなどが出演したテレビドラマとなり高視聴率を得ました。 あすなろは翌檜(あすなろ)というヒノキ科の植物から取ったようです。 |
いちご白書 | 同名タイトルのアメリカ映画と日本のドラマがあり、映画の方は1970年に公開された「The Strawberry Statement」のことで、white paperではなくStatementなので、白書は邦題として付けられました。「いちご」の由来についてはコロンビア大学学部長のハーバート・ディーンが大学運営についての学生の意見は「苺の味が好きだ」と言ってるくらい意味を持たないという発言から取ったそう。 テレビドラマは1993年に小田茜さんや安室奈美恵さんが出演し、タイトルの意味は不明です。 共に全くの別作品のため繋がりはありません。 |
法制局による白書についての解説
最後に、法制局の永野豊太郎さんという方が調査した資料もありますので、引用文としてご紹介します。
ソースもあるのでリンクからご確認ください。
白書というものは中央官庁の編集する政府刊行物である、そしてその内容は政治、経
済、社会の実態及び政府の施策の現状について国民に周知させることを主眼とするもので
ある(中略)。
その言葉の由来は、英国において政府が作成する外交報告書の表紙が白(white paper)であったことにあると言われており、その種類は、①法律に基づいて国会に提出した報告書を刊行するもの(いわゆる法定白書と呼ばれるもの)(中略)
②閣議に報告又は配布し、閣議の了解を得た後に公表されるもの(例:防衛白書、警察白書)に大別されます。
日本における一番初めの「白書」は、昭和 22 年7月4日に国会に提出された「経済実相報告書」(現在の経済財政白書)であり、法定白書に限ると、翌 23 年に国会に提出された「独占禁止白書」(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第 44 条第1項)が最初であると思われます。