「コワーキング」はオフィス形態やワークスタイルの1つで、仕事を行うデスクやソファー、事務所、会議を行うミーティングルームなどの場所が共用スペースになっており、異なる会社の社員や各個人事業主などがそれらをシェアしながら働く事を指す用語で、そのようなスタイルで働ける場所・環境を「コワーキングスペース」といいます。
これまでの多くのオフィスビルでは、各フロアの一角を借り、そこにデスクやテーブルだけでなく打ち合わせの部屋を作ったりコピー機などの仕事に必要な道具を設置し『同じ組織の人がその場所で働く』ことになるわけですが、コワーキングの場合は会議室などを除き『同じ組織の人がその場所で働く』スペースがなく、コワーキング内のどのデスクやソファーでも仕事が出来ます。
コワーキングスペースとよく比較されるのがレンタルオフィスで、仕事に必要な道具一式が揃っている点は共通していますが、レンタルオフィスが区切られたスペースを契約した個人や法人が利用するのに対し、コワーキングは区切られたスペースやパーテーションなど無く、契約者でシェアしながら利用する点が異なります。
イメージとしては図書館のようなオープンスペースに、会議室や打ち合わせなどが出来る部屋がプラスされたような、よりオフィスとしての環境を整えた場所と思っていただけるとわかりやすいかと思います。
利用者はスタートアップの起業家や、フリーランスのシステムエンジニア(SE)であったり、デザイナー、建築家、コンサルタント、ライターなど仕事場所を選ばない業種が多く、各々が独立した仕事を行いながらも同じ価値観を共有するコミュニティーが形成され、知識やアイデアの共有、情報交換、他の分野の人たちとの交流などで仕事上での相乗効果を得られるとされます。
それでは実際どんなものなのかがわかるよう、利用したコワーキングスペースの写真を使って見ていきましょう。
上の写真は2016年11月1日に誕生したYahoo!JAPANが運営している日本最大級のコワーキングスペース「LODGE」(ロッジ)です。
広さはなんと1,330平方メートルにもなるオープンスペースに個人向けデスクやチェア、複数人向けの大型テーブルや各種ソファーなどが多数ありました(2016年11月3日撮影)。
ロッジの公式サイトと、平方メートルの目安についてはこちらのリンクからご確認下さい。
誰の席かは決まっていませんので、空いていれば好きな場所に座って仕事をします。
もちろんですがフリーWi-Fiも使えますしコンセントも利用出来ます。
同じ会社同士の人もいれば、個人で利用する人、サークルやコミュニティーの人たち、様々いました。
ミーティングルームはガラス張りとなっていて、こちらも特定の人だけしか使えないという訳でなく、入居者は誰でも利用出来る共用スペースです。
ホワイトボードやプロジェクターなども用意されています。
カフェスペースもあります。
お邪魔した2016年当時はドリンクなどの提供はありませんでしたが、現在はドリンクの他軽食も販売されているようです。
次は五反田にある「Pao」(パオ)というコワーキングスペースを見てみましょう。
2017年10月3日に撮影しました。
メインのスペースには大人数で使えるテーブルが設置してあり、その周りには個々のデスクが配置されていました。
オプションで個人専用のデスクとして利用する事も可能でした。
キッチンスペースと冷蔵庫があり、一部の飲み物は無料で提供されています。
ミーティングルームは貸し会議室としても利用が可能す。
以下ではコワーキングスペースはどのように利用するのか、方法や料金、メリット・デメリットや利用する目的などについて、さらに詳しく説明していきます。
料金体系
コワーキングスペースは統一された料金はありませんので、それぞれの拠点で利用方法や料金体系が異なります。
各店舗の公式サイトを確認してからの利用が必須となりますが、「コワーキングスペースでは、だいたいこのような料金体系が多い」という内容でお伝えします。
多くの場合は「月額会員」と「ドロップイン」の2種の体系で料金を組んでいる事が多いです。
月額会員は文字通り定額の金額を払って利用しますが、各コワーキングによってプランが異なります。
土日しか利用出来なかったり、利用時間の制限があったり、使える場所が異なるなどがあります。
これは自身の利用スタイルにあわせてプランを決めましょう。
都内の料金の目安としては平日だけなどの制限があるプランだと6000円くらい、フルタイム(コワーキングの営業時間内)で15,000円前後位になるかと思います。
ドロップインは月額の契約は不要で、利用したいときだけ料金を払う方式です。
1時間ごとに料金が設定されてたり、長時間だと安くなったりとカラオケのような料金体系です。
こちらは時々しか利用しない方や出張先で仕事をしたい方にぴったり。
1時間あたり500円前後の料金が多かったです。
月額会員になる前のお試しでドロップインを利用する方も多いようです。
オプションでコピー機やプリンタの利用や、個別スペースを利用出来るようになったり、ドリンクや軽食が購入出来るコワーキングなどがあります。
各店オプション様々ありますので確認のうえ、より便利に使いこなすのがいいかと思います。
Wi-Fiなどのインターネット環境はもちろん無料で使えるところがほとんどです。
利用方法
コワーキングでは決められた利用方法等はありませんので、利用時の説明や公式サイトを確認しておく事をおすすめします。
その地域のユーザーのニーズにあわせ、独自の利用方法やルールやプランなど、より複雑化している傾向にあると感じていますので、以下では「だいたいこのような利用方法」という内容でお伝えします。
まずはコワーキングがどこにあるか探さないと始まらないわけですが、多くの場合はネット検索になるかと思います。
「(地域名) コワーキングスペース」とグーグルで検索すると、地図で表示してくれたり、地元在住の方のブログでまとめられていたりする場合もあるので、参考にしてみるといいかと思います。
目星を付けたら公式サイトを検索して料金やプランを確認し良ければ来店し、受付カウンターにてドロップインで利用する場合はその旨を伝えて入場します。
基本的には以下の設備や備品が揃っています。
パソコンが用意されているコワーキングはほとんどありませんので、自身のノートPCは必須になります。
- Wi-Fi環境
- デスク、チェア
- 電源
- ロッカー(無いことが多いです)
- ミーティングルーム(要予約の場合も、別途料金)
- コピー機(別途料金)
- ドリンク(有料・無料、提供なく持ち込みする必要な場合も)
- ディスプレイ(オプションで可能な場合も)
- プロジェクター(オプションで可能な場合も)
- ホワイトボード(MTGルームに設置してある事が多いですが無い事も)
飲食については可能なところが多いですが、やはり匂いがきついものや麺類など音を立てて食べるのは迷惑となるため避けたほうがいいかと思います。
実際パンやお菓子など軽食の方が多かったです。
メリット・デメリットについて
メリット
- スタートアップの企業や個人事業主でオフィスに予算を避けない場合など本人や従業員向けに利用することでコスト削減になる
- ネット回線、プリンター、コピー機などオフィスに必要な機器が揃えてあるため購入の必要がない
- 異業種との交流や他の才能ある方との情報交換も可能
- ドロップインで利用すれば初めて来た地方でも仕事が出来る
- 狭いオフィスだと会議室のスペースを確保するのも難しいですが、用意されています
デメリット
- 混雑してくるとやや窮屈に感じる
- 机に区切りがないため他の方と隣接した場合、気を使いあまりスペースを広く使えない
- 壁やパーテーションなどがないため情報を見られてしまう可能性も
- 他の方の話し声や雑音などが入ってくるため、音が気になる方は集中出来ない可能性
コワーキングの語源は?
「co」と「working」を組み合わせた「co-working」が語源となっていて、coは「共同」「共通」といった意味がある接頭辞で、workingはご存知の通り「仕事」なので、ぴったり当てはまる言葉ではありませんが協働や共働といった意味合いに近いかと思います。
他にもcoを使う用語として知られているのは「コオペレーション」(Cooperation)が挙げられます。
coとoperationの組み合わせで、「ご協力ありがとうございます」といった意味合いで使われ、駅や空港でのアナウンスで「Thank You for Your Cooperation.」というようなフレーズをよく耳にします。
よく法人とか会社の意味の「corporation」(コーポレーション)と間違えられる事が多いですが別の言葉です
詳しくはこちら「コオペレーションとは?」をご覧ください。
コワーキングスペースより法人として利用するのに適したスタイルなのがWeWork(ウィーワーク、ウィワーク)です。
個人で契約している人も多いですが、大手企業が数十人単位で契約して働くような使い方が見られます。
WeWorkを実際に利用した感想なども掲載していますので、詳しくはこちら「WeWorkとは?」をご覧下さい。
発祥について
コワーキングの発祥はアメリカのサンフランシスコにある「シリコンバレー」と呼ばれるIT企業の集まる地域から始まります。
最古参と言われているのが「シチズン スペース」(Citizen Space)というコワーキングスペースで、2006年に開設されました。
複数の企業を経営していた方が創業者で、それぞれの従業員が1箇所に集まって仕事をする目的で作られたようです。
その後シリコンバレーだけでなく世界中にコワーキングが広まり、日本では一番最初のコワーキングとして2010年5月にスタートした神戸の「カフーツ」、次に東京の世田谷にある「PAX Coworking」(パックスコワーキング)、大阪の十三にある「JUSO Coworking」(ジュウソウコワーキング)と続き、2019年現在では、正式な統計はありませんが2019年現在。大小さまざまな形態を含め1,000拠点ほど存在すると考えられます。