SIMカードやモバイル通信・携帯電話など、通信業界に関連するキーワードとして出てくる「MVNO」について徹底解説です。

MVNOは「Mobile Virtual Network Operator」(モバイル バーチャル ネットワーク オペレーター)の略で、日本語だと「仮想移動体通信事業者」と訳されます。

何だかこれだけでわけわからなくなちゃいそうな用語ですが、そんな難しい事ではなく簡潔に言うとこうです。

自社でネット回線網を持たず、他社が保有している回線を借りて、それを自社サービスとしてユーザーに通信サービスを提供する事業者の事

MVNOがLTEやWiMAXなどのモバイルインターネット回線を指すのに対し、フレッツ光やauひかりのような固定インターネット回線を指すのはFVNOです。

詳しくはこちら「FVNOとは?」をご覧下さい。

きちんとした定義については総務省が「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」で以下のように定めています。

MVNOとは、
  1. MNOの提供する移動通信サービスを利用して、又はMNOと接続して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって、
  2. 当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設しておらず、かつ、運用をしていない者と定義する。


1項にある「MNO」はMobile Network Operatorの略で、回線網を自社で持つ通信サービス提供会社の事なので、NTTドコモやKDDI(au)やソフトバンクモバイルなどのキャリアを指します。

つまりどういう事なの?!となるかもしれませんので、実際にあるWiMAXを例に挙げて説明します。
WiMAXはモバイル通信のサービスですが、探してみるといろいろな名前を見かけませんか?

有名どころを挙げるとこんなとこでしょうか。

いっぱいありますね。
しかしよく考えてみると、WiMAX回線を引いてサービスを提供するには国の許可も必要ですし工事費に研究費に設備維持費にとてつもない額のお金が必要になります。
ここで挙げた1社1社が独自でそれらを行っているのかというとちょっと考えにくいです。

しかも全国にネットワークを広げるとなると、かなり資本力のある限られた会社だけしか実現できないはずです。

ではなぜこんなに多くの会社がサービス提供できるかというと、実はWiMAXの回線網を増やしたりメンテナンスを行っているのは、UQコミュニケーションズ株式会社という会社1社だけなんです。
UQは携帯電話の「au」や、固定インターネット回線「auひかり」と同じKDDIの子会社で、自社でも「UQ WiMAX」としてサービス提供しています。

ということは、どのWiMAXを選んでもUQ WiMAXの回線を使って通信を行っているという事になります。

そして、UQ WiMAXの回線を使ってサービス提供している事業者のことを「MVNO」といいます
つまり上で挙げた会社は、UQ WiMAX以外すべてMVNOという事になります。

UQ WiMAXがネットワーク回線のキャリアとして、MVNOにそれを卸しているという関係性です。
MVNOはユーザからの申し込みを受け付け、キャリアの回線に繋がるように手配したりアフターケアなどを行います。

ですので他キャリアが参入しない限り現状では「●● WiMAXは電波いいけど▲▲WiMAXは電波悪い」という事はありません。同じネットワークを使っているので(厳密にいうとそうでない場合もありますが)。

MVNOに回線を貸す側、上で説明した例だとUQ WiMAX(KDDI)の事を「MNO」(Mobile network operator)といいます。
日本語で「移動体通信事業者」です。

そして、MVNOと提携してノウハウ提供や事業支援する事業者を「MVNE」(Mobile virtual network enabler)と呼びます。

MVNOはWiMAXに限った事ではなく、LTEやTD-LTEなど他の回線でもMVNOがサービス提供を行っています。
WiMAXの回線網はUQ WiMAXがほぼ独壇場でしたが、LTE回線については下記のように会社がそれぞれで独自のネットワークを広げています。

LTEキャリアとサービス名
キャリア サービス名
NTTドコモ Xi(クロッシィ)
au(KDDI) au 4G LTE
ソフトバンクモバイル SoftBank 4G LTE

そして、それぞれのLTEキャリアごとにMVNOが存在します。
下記はLTEのMVNO一覧ですが、上記キャリアのいずれかの回線網を利用しています。

LTEの場合はWiMAXと違い複数のキャリアが存在するので、「●● LTEは電波いいけど▲▲ LTEは電波悪い」という状況もあります。

LTEのMVNO一覧

回線を保有しているキャリアとしては、わざわざ回線を他社に使わせて何か得があるのでしょうか?

近年、総務省がMVNOの新規参入を促進している事もあり年々MVNOは増えています。
ライバルがどんどん増えて収益が苦しくなるだけのようにも思えますが、なぜそんな事をするのかは以下にまとめました。

MVNO / キャリア / ユーザーそれぞれのメリットとデメリット
MVNO
1番のメリットは参入しやすい点といえます。キャリアに参入となるとリスクが非常に高く投資も必要なうえ使える周波数帯域も限られていますが、MVNOだと非常に敷居が低くなります。

デメリットとしては参入の敷居が低いので競合が多く、独自の付加サービスやプラン・価格競争で勝負することになります。

キャリア
各MVNOがそれぞれのサービスを広めているため、ユーザ獲得の広告費が大幅に削減できます。
また、料金プランであったりサービス内容は各MVNOが独自に決めた内容で展開しているため、様々なターゲット層の獲得が可能になります。
キャリア側で大量のプランを作ったりするのは現実的ではないですが、各MVNOがニーズに合ったプランを作り出してくれます。
ユーザー
いろいろな条件やサービス内容があるので選択の幅が広がります。
例えば楽天のWiMAXであれば契約すると毎月ポイントがもらえます。他のMVNOでは、二段階定額、使う時間が限られる代わりに料金が安い、2年縛りの違約金がない代わりに月々の料金が高い、貸し出しサービス(MVNOでない場合もあり)や、価格勝負のところだとキャッシュバックや端末無料などを行ったりなど様々なMVNOのプランが存在します。

ユーザのメリットを書きましたが、WiMAXやLTE以上に料金体系やサービスに様々な特徴が見られるのがSIMです。
近年参入も多くそれぞれのMVNOが工夫を凝らしたプランになっています。

LTEのMVNO一覧

特に料金が非常に安く通信速度が遅いサービスが多いですが、ユーザによってはそれで十分な速度だったりします。
スマホを使っていてキャリアとの通話契約が必要ない場合はこのSIMを使えば月額最安だと数百円からスマホが使えます。
通話もアプリを使えば代用できますので非常に経済的。

以上、MVNOについての説明でした。
それぞれ自身の使い方にあったMVNOのサービスを利用する事で、毎月の通信料金を劇的に安くする事もできます。
ただ、キャリアの審査を受けているとはいえ、MVNOの中にも評判がよくなかったりよく読まないと不利な規約になっていたりと、トラブルになった事例も見られますので、事前に調べた上で申し込むといいかと思います。